週刊エコノミスト連載「ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ経済英語」をまとめた『ウォール・ストリート・ジャーナル式 経済英語がよくわかる本』(毎日新聞社刊)が発売された。2014年10月までウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)日本版の初代編集長を務めた小野由美子さんに聞いた。(聞き手=横田恵美・週刊エコノミスト編集長)
── 本書の特徴は。
小野 経済記者が記事を選んでいるので、いま話題の経済英語を学ぶことができます。また原文と日本語訳を読み比べられる。それも長い文章だと疲れるので、短文にまとめている。同時に、日本人の間違いやすい言い回しに焦点を当て、文法・表現のおさらいができます。
── 英語記事を読むコツは。
小野 最初から100%分かろうと思わずに、まず最後まで読んでポイントを押さえ、全体の意味を把握することが重要です。そして、英語記事のフォーミュラ(決まった形)を知ると読みやすい。英語の記事は、見出しと冒頭のリードが一体となり、内容が分かる仕組みになっている。このパターンを意識しながら読んでください。
── ですが、見出しを見ても意味が分からないことが多い。
小野 その理由は、日本語と英語の情報量の差だと思います。日本語は漢字を使うので、内容を凝縮できる。英語だとそれほどの意味を同じスペースに入れることができないので、どうしても分かりにくくなってしまう。また特に米国の場合、ひねりを利かせたり、ジョークを使ったりと凝った見出しが多いので、余計難しい。ですが、最近はインターネットでの記事の配信が多くなり、凝った見出しだと検索に引っかかりにくいなどの理由で、多少分かりやすくなってきたという変化はあります。
── お勧めの勉強法は。
小野 やはり数をこなすことです。そこで自分の好きなトピックを決めるのが効果的です。例えば野球とか、ワインとか、自分の好きな分野をつくって集中して読むと、勉強が楽になっていくと思います。
あと最近、メディアがどんどん映像化されています。WSJでも記事を書いた記者が、それを解説する動画が数多くあります。話し言葉にも慣れるし、話すスピードにも慣れるので、英語学習に役立ちます。
── 日本人は英語で損している。
小野 すごく損していると思いますよ(笑)。日本語で話していると、知識も豊富でとてもできるな人だなと思う人でも、英語が必要な環境になるとそれを周りの人に分かってもらえない場面に何度も遭遇します。
── グローバル人材の育成が叫ばれています。
小野 英語ができても、それだけではもちろん駄目です。意外に見落とされているのが、英語環境の中での振る舞い方やプレゼンテーションの仕方です。英語を話す人たちの中ではこういう振る舞い方をした方が意見が通りやすい、評価されやすいというのがあります。
人を批判するときでも、米国人は、二つほめてから批判します。ほめてから初めて「でも、やっぱりここはちょっと改善した方がいいね」というポジティブな言い方をします。
また日本人は慎重なので、すぐに「それは難しい」「無理です」と言ってしまう。これだと、「ああ、できない言い訳をしているな」と思われてしまいます。米国人は「その目標を達成するために精いっぱい頑張る。しかし、こことここに気を付けなくては目標は達成できない」というような言い方をします。
あと日本人は受け身の人が多いですが、常に自己アピールして構わない。「こうしたらいいと思う」「私はこうしたいと思っている」という提案は「出しゃばっている」とは思われません。