文壇のワープロ王子だったはずが……
字が汚くて、書くのが遅く、
ワープロがなかったら小説家にはなっていなかった、という著者。
「ワープロで小説を書くなんて」
――当時の文壇は電脳に否定的かつ閉鎖的だったけれど、
そんな空気をものともせず、これ幸いとワープロを導入したタカハシさん。
瞬く間に親指シフトを習得。
締め切りの追われ、書き上げた原稿が消失しても、
めげることなく、日々、作品を書き続けてきました。
あのとき、時代の先端を行く「文学界のワープロ王子」こと
タカハシさんも、気づけば還暦。
スマフォやタブレット端末が台頭しても、二つ折り携帯で用は足りる、
ツイッターも出来るし『電脳社会のガラパゴス島』にいても何不自由なく暮らしている。
それでいい、と思っていたのだが……。
ほんとうは羨ましかったんです
そんなタカハシさんを変えたのは、小学生の息子たちの存在。
説明書なしで、しかも、一夜にしてiPadを使いこなしてしまった!
その場面に遭遇したとき……本当は気になって、知りたくて、羨ましかった、
パンドラの箱だった「電脳の世界」の扉が開いてしまったのです。
アイ、アイパッド……ください!
ぼくは、いちばん親切そうで、優しそうな、
女性スタッフを見つけ、走った。
そして、彼女に向かって叫んだ。
「アイ……アイパッド、ください!」
なんか、ちょっと、愛の告白みたいだった。
(本文より)
〈もくじ〉
1 はじまりは
2 さあ、はじめよう
3 書斎で 旅先で
4 トラブル&トライ
5 政治や経済とネットについて考えた
6 中の人びと
7 結局、使うのは人間なのだ
LINEやスタンプ、ツイッター、電子書籍、ユーチューブ、ネットショッピング、選挙、デザイン、映画、文学、アニメなど、デジタルとの日々を軽やかに綴る、デジタル・エッセイ。
「デジタルなんて」と敬遠しがちな人も、
「今からでも大丈夫」と勇気づけられること、間違いなし!