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ISBN:4620903647
佛教藝術 334号
ISBN:978-4-620-90364-4
佛教藝術學會:編
毎日新聞社
定価:本体3,200円(税別)
国内のみならず、海外からも高い評価を得ている(国際逐次刊行物番号:ISSN 0004-2889)1948年創刊の東洋美術と考古学の研究誌。斯界の泰斗から気鋭の研究者、さらには若き学研の徒まで、毎号多彩な執筆陣による研究成果を掲載。
◇「『彦火々出見尊絵巻』の制作動機に関する一考察――絵巻の基となった説話と仏画の図様との共通性に着目しながら――」
(五月女晴恵:北九州市立大学文学部比較文化学科准教授)
平安時代末期、後白河院の命による制作とされる『彦火々出見尊絵巻』の制作動機について、絵巻の画面の所々に詞書に無い要素が盛り込まれている点に着目。それらの個所を院が絵巻の基となった話の源泉である『今昔物語集』や『三宝絵』所収の龍宮訪問譚の説話、すなわち龍宮から仏法の精髄を持ち帰る内容の本生譚と認識していたため、仏画や法華経絵と共通する図様を、龍宮を中心に使用したとする。さらに分析を進め、王法仏法相依論を信受する院と、この絵巻の題材との関連を解き明かしていく示唆に富んだ論考となっている。

◇「京都・知恩院所蔵〈観世音菩薩三十二応幀〉のトポグラフィー」
(呉永三:京都精華大学非常勤講師)
京都・知恩院所蔵「観世音菩薩三十二応幀」の中の山水表現についての考察。本作は『華厳経』の金剛宝石に観音菩薩を安置し、周囲の山水空間に経説を配する伝統的な『法華経』普門品変相図に則って描かれるが、画面全体の構成が『不空羂索神変真言経』にみられる蓮華状のように表現するところに斬新さを認めながら、高麗や朝鮮時代に不空羂索観音が造成された例は見当たらず、顕教の経典を主題とするのに密教のトポスがどれほど意識されていたのかを疑問視。別のトポスを求め風水に収斂されることを論証する。山水表現を仏画の浄土に限定する見方ではなく、トポスの重層性に認める新味のある知見。

◇「興福寺南円堂不空羂索観音像の来歴」
(谷本啓:奈良大学非常勤講師)
興福寺南円堂不空羂索観音像の当初像についての考察。近年通説化していた天平18年(746)造立の講堂本尊移座説に対し、平安時代初期の藤原内麻呂新造説を改めて主張する。講堂本尊は、『興福寺流記』注に引く『宝字記』の割注にある「高一丈六尺」が、『宝字記』で中・東・西金堂の本尊像を「丈六」とする記載法と異なる点から立像と考え、そこから坐像の南円堂本尊ではないとする。推論は講堂本尊像が何らかの理由で失われ、藤原内麻呂によるその再興像を、藤原冬嗣が南円堂を建立してそこに移座した事情に及んでいる。

◇「鎌倉時代における刀身彫刻の研究」
(酒井元樹:東京国立博物館研究員)
鎌倉時代から盛行の神仏を象徴する種子や三昧耶形などの刀身彫刻に関する論。刀剣界の先学による刀工や注文主という表現上の主体者の研究成果を整理・検証しつつ、当時の社会情勢に影響を受けた、信仰構造による表現傾向が認められるとの問題意識から、その位置づけに対し新たな見解を提示する。調伏と護身・息災の目的とともに、その表現には、密教教義に基づく神仏の記号化・象徴化などの合理性があることや、特に鎌倉時代後半に起きた蒙古襲来による長期的な緊張状態が刀身彫刻の盛行と定着化の大きな要因となったことを、諸史・資料により論証するなど、これまでの刀剣研究の域をこえた考察となっている。


<B5判/96頁>

 
 
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